python_molecular_editor

MoleditPy ユーザーマニュアル

1. はじめに

MoleditPy は、Python で開発された分子編集ソフトウェアです。直感的なインターフェースを通じて、2D での分子構造の描画・編集、および 3D 構造の生成・表示・編集を行うことができます。

主な機能:


2. インストールと起動

  1. パッケージのインストール このコマンドを実行すると、お使いのOS(Windows/macOSまたはLinux)に適した moleditpy 本体が自動的にインストールされます。

    pip install moleditpy-installer
    
  2. ショートカットの作成 インストール後、このコマンドを実行すると、アプリケーションメニュー(スタートメニューやアプリケーションフォルダなど)にショートカットが作成されます。

    moleditpy-installer
    

起動:

以下のコマンドで起動できます。

moleditpy

Windows向けインストーラー

Moleditpy は Windows 用のインストーラーを提供しています。インストーラーを使うことで、Python 環境の手動セットアップなしに簡単に Moleditpy をインストールできます。

Windows インストーラー


3. 画面構成

MoleditPy のメインウィンドウは、主に以下の要素で構成されています。

  1. メニューバー: ファイル操作、編集、表示、分析、設定、ヘルプなどの機能が含まれます。
  2. メインツールバー: 原子・結合の描画モード選択、電荷・ラジカル設定、3D 表示スタイル変更などの基本的なツールが配置されています。
  3. テンプレートツールバー: 環状構造などのテンプレートを選択するためのボタンが配置されています。
  4. 2D 編集ビュー: 分子構造を描画・編集するメインのキャンバスです。マウス操作で原子や結合を追加・編集できます。
  5. 3D 表示ビュー: 生成または読み込んだ分子の 3D 構造を表示します。マウスで回転、ズーム、パン操作が可能です。3D 測定や編集もこのビューで行います。
  6. スプリッター: 2D ビューと 3D ビューの間の境界線です。ドラッグして各ビューの表示領域サイズを変更できます。
  7. ステータスバー: 現在の操作モード、メッセージ、計算中の分子式・原子数などを表示します。

4. 基本的な操作 (2D 編集ビュー)

2D 編集ビューでは、マウスとツールバー、キーボードショートカットを使って分子構造を作成・編集します。

4.1. 描画モードの選択

メインツールバーのボタンをクリックするか、対応するキーボードショートカットを押して、描画モードを選択します。

4.2. 原子・結合の操作

4.3. テンプレートの使用

4.4. Undo/Redo

4.5. コピー/カット/ペースト


5. ファイル操作

メニューバーの File メニューから各種ファイル操作を行います。

5.1. プロジェクトファイル (.pmeprj (Python Molecular Editor Project File))

5.2. インポート

5.3. エクスポート


6. 3D 機能

MoleditPy は、描画した 2D 構造から 3D 構造を生成し、表示、測定、編集を行う機能を提供します。

6.1. 2D から 3D への変換

  1. 2D 編集ビューで分子構造を描画します。
  2. 左下の Convert 2D to 3D ボタンをクリックするか、メニューの Edit > Convert 2D to 3D (Ctrl+K) を選択します。
  3. 計算が開始され、ステータスバーに進捗が表示されます。RDKit (ETKDGv2 アルゴリズム) を使用して 3D 座標が生成され、力場計算 (MMFF94 または UFF) によって簡単な構造最適化が行われます。
  4. 成功すると、3D 表示ビューに生成された 3D 構造が表示されます。

(設定): メニューの Settings > 3D Conversion から、変換に使用するライブラリ (RDKit, Open Babel) の優先順位を設定できます。また、Direct モード(2D 座標をそのまま用い、水素原子を付加するモード)を選択することもできます。Open Babel がインストールされていない場合、関連するオプションは無効になります。

6.2. 3D 構造の最適化

(設定): メニューの Edit > 3D Optimization Settings または Settings > 3D Optimization Settings から、使用する力場計算ライブラリとメソッド (RDKit MMFF/UFF) を選択できます。

6.3. 3D 表示スタイルの変更

メインツールバー右側の 3D Style ドロップダウンメニューから、表示スタイルを選択できます。

(設定): 各表示スタイルの詳細 (原子サイズ、結合半径、描画品質、多重結合の表示オフセットと太さなど) は、メニューの Settings > 3D View Settings... から調整できます。また、Settings > CPK Colors... から CPK色 を変更することも可能です。

6.4. 3D ビューの操作

6.5. 公式プラグインリポジトリ (ダウンロード可能)

GitHub リポジトリ にて、公式サンプルプラグインが公開されています。これらをダウンロードし、プラグインディレクトリ (~/.moleditpy/plugins) に配置することで利用可能になります。

利用可能なプラグイン:

6.6. 3D 測定機能 (“3D Select” モード)

  1. メインツールバーの 3D Select ボタンをクリックして、測定モードを有効にします。
  2. 3D ビュー上で原子をクリックして選択します。選択された原子には順番に番号 (1, 2, 3, 4) が赤いラベルで表示されます。
  3. 選択した原子の数に応じて、以下の測定値が計算され、3D ビューの左上に表示されます。
    • 2 原子選択: 原子間距離 (Å)
    • 3 原子選択: 距離 (1-2) および角度 (1-2-3) (°)
    • 4 原子選択: 距離 (1-2)、角度 (1-2-3) および二面角 (1-2-3-4) (°)
  4. 原子以外をクリックするか、または 3D Select ボタンを再度クリックしてモードを解除すると、選択と測定値がクリアされます。

6.7. 3D 編集機能 (“3D Drag” モード / Alt キー)

3D 構造の原子座標を直接編集できます。メインツールバーの 3D Drag ボタンをオンにするか、Alt キーを押しながら操作します。

6.8. その他の 3D 編集機能 (メニュー 3D Edit)

これらの機能は、3D 構造が表示されている場合にメニューから利用できます。多くは専用のダイアログが開き、そこで原子を選択したり、パラメータを入力したりします。

6.9. 制約付き最適化 (Constrained Optimization)

特定の原子間の距離、角度、または二面角の値を固定(制約)したまま、分子全体の構造最適化(力場計算)を実行する高度な機能です。

6.10. 原子情報の表示

メニューの View > 3D Atom Info Display から、3D ビューの各原子の上に表示する情報を選択できます。

同じメニュー項目を再度選択すると、表示がオフになります。


7. 分子分析

メニューの Analysis > Show Analysis... を選択すると、現在 3D ビューに表示されている分子 (XYZ 由来を除く) の基本的な特性を計算し、表示するダイアログが開きます。

表示される情報例:

各値の横にある Copy ボタンで、その値をクリップボードにコピーできます。


8. 設定

メニューの Settings > 3D View Settings... から、3D 表示に関する様々な設定を変更できます。

設定可能な項目:

Apply ボタンで設定を即座に反映し、OK ボタンで適用してダイアログを閉じます。Reset Current Tab / Reset All で設定をデフォルトに戻すこともできます。設定は次回起動時にも保持されます。


9. キーボードショートカット

キー 機能 (Select モード) 機能 (描画/編集モード)
Space Select モードに切り替え / 全選択 (選択なしの場合) Select モードに切り替え
C, H, N, O, S, P, F, I, B 対応する原子描画モードに切り替え / カーソル下の原子をその元素に変更 対応する原子描画モードに切り替え
Shift+C Cl 描画モード / カーソル下の原子を Cl に変更 Cl 描画モード
Shift+S Si 描画モード / カーソル下の原子を Si に変更 Si 描画モード
Shift+B Br 描画モード / カーソル下の原子を Br に変更 Br 描画モード
1 単結合描画モード / 選択結合 or カーソル下結合を単結合に / 原子に原子を追加 単結合描画モード
2 二重結合描画モード / 選択結合 or カーソル下結合を二重結合に 二重結合描画モード
3 三重結合描画モード / 選択結合 or カーソル下結合を三重結合に 三重結合描画モード
4 (空の空間で)ベンゼンモードに切り替える / (原子/結合上で)ベンゼンを配置する ベンゼンテンプレートモード
W Wedge 結合描画モード / 選択結合 or カーソル下結合を Wedge に (クリックで反転) Wedge 結合描画モード
D Dash 結合描画モード / 選択結合 or カーソル下結合を Dash に (クリックで反転) Dash 結合描画モード
Z / E (カーソル下の二重結合に対して) Z / E 配置を指定 (カーソル下の二重結合に対して) Z / E 配置を指定
. (ピリオド) 選択原子 or カーソル下原子のラジカルをトグル (0->1->2->0) 選択原子 or カーソル下原子のラジカルをトグル (0->1->2->0)
+ / - 選択原子 or カーソル下原子の電荷を増減 選択原子 or カーソル下原子の電荷を増減
Delete / Backspace 選択アイテム or カーソル下のアイテムを削除 (描画操作中に) 操作をキャンセル / 選択アイテム or カーソル下のアイテムを削除
キー 機能
Ctrl+Z Undo
Ctrl+Y / Ctrl+Shift+Z Redo
Ctrl+C Copy Selection
Ctrl+X Cut Selection
Ctrl+V Paste
Ctrl+A Select All
Ctrl+N New
Ctrl+O Open Project…
Ctrl+S Save Project
Ctrl+Shift+S Save Project As…
Ctrl+J Optimize 2D
Ctrl+K Convert 2D to 3D
Ctrl+L Optimize 3D
Ctrl++ Zoom In (2D View)
Ctrl+- Zoom Out (2D View)
Ctrl+0 Reset Zoom (2D View)
Ctrl+9 Fit to View (2D View)
Ctrl+R Reset 3D View
Ctrl+1 Panel Layout 50:50
Ctrl+2 Panel Layout 70:30 (2D Focus)
Ctrl+3 Panel Layout 30:70 (3D Focus)
Ctrl+H Toggle 2D Panel Visibility
Ctrl+Q Quit

10. バージョン情報 / ライセンス

メニューの Help > About からバージョン情報を確認できます。