MoleditPy PySCF Calculator Plugin Tutorial

4. SN2反応のスキャンと遷移状態探索

(計算レベル: B3LYP/ma-def2-svp)

目的

クロロメタン(CH3Cl)と臭化物イオン(Br-)のSN2置換反応を題材に、反応座標のスキャン計算(Relaxed Scan)を行い、エネルギー障壁を見積もります。さらに、その構造を初期値として遷移状態(TS)計算と振動解析を行い、虚振動を確認します。

操作手順

Step 1: 分子の描画と配置

  1. 分子の描画:
    • クロロメタン (CH3Cl) を描画します。
    • その近くに臭化物イオン (Br-) を描画します。
  2. 3D変換:
    • ツールバーの "Convert 2D to 3D" を押して3D構造に変換します。
    分子描画と3D変換
  3. 位置調整:
    • "3D Edit > Move Group..." ツール等を使い、Br- を炭素原子の背面攻撃側(Clの反対側)に配置します。
    Group移動
  4. 結合距離の調整:
    • "3D Edit > Adjust Bond Length..." ツールを使い、C-Br間の距離を 2.8 Å に設定します。
    距離調整 2.8A

Step 2: リラックススキャン計算 (Relaxed Scan)

  1. PySCF Calculatorの起動:
    • Extensions > PySCF Calculator を開きます。
  2. スキャン設定:
    • Modeを Relaxed Surface Scan に設定します。
    • "Configure Scan" ボタンを押し、Distanceタブで以下のように設定します:
      • Start: 2.8 Å
      • End: 1.96 Å
      • Steps: 5
    • この設定は、BrがCに近づいていく過程を計算します。
    Scan Config設定
  3. 計算レベルの設定:
    • Method: RKS (B3LYP)
    • Basis: ma-def2-svp
    • 注: アニオンの計算には ma-def2-svp のような拡散基底関数(diffuse function)を含む基底関数が推奨されます。STO-3Gより時間がかかります。
  4. 計算実行: "Run Calculation" をクリックします。時間がかかるので待ちます。

Step 3: エネルギー図と遷移状態の推定

  1. 結果の確認:
    • 計算終了後、Energy Diagramを確認します。エネルギー障壁(山なりのグラフ)が表示されているはずです。
    • アニメーション再生ボタンを押し、反応の様子を確認します。
    エネルギープロファイル スキャンアニメーション
  2. TS候補の選択:
    • グラフ上の 最もエネルギーが高い点(Highest Point) をクリックします。
    • これにより、そのステップの構造がメイン画面に反映されます。これが遷移状態(TS)の良き初期構造となります。
    TS候補の選択

Step 4: 遷移状態(TS)計算と振動解析

  1. 計算設定の変更:
    • Calculationタブに戻ります。
    • Job Type: TS Optimization + Frequency に変更します。
    • その他の設定(B3LYP / ma-def2-svp)は変更しません。
    TS計算設定
  2. 計算実行: 再度 "Run Calculation" をクリックします。

Step 5: 虚振動の確認

  1. 振動モードの確認:
    • 計算完了後、Vibrational Modesリストを確認します。
    • 負の振動数 (Imaginary Frequency) が1つだけ存在することを確認します。これは遷移状態であることを示します。
    • そのモードを選択し、アニメーションで原子が反応座標に沿って動いていることを確認します。
    虚振動の確認 虚振動アニメーション
活性化エネルギーの算出:
正味の活性化エネルギーを求めるには、エネルギーの比較が必要です。 (参考: 1 Hartree ≈ 627.5 kcal/mol)

(注: 真空中での計算のため、プロファイルはダブルウェル型となります。また、遷移状態は反応物よりも安定である可能性があります。)